HMV(Human Metamorphose Virus -Acclerated Mutation-) STD。そのように称することが正確であるかは検討の余地があるが、このウィルスによる感染症を暫定的にSTDと分類する。 12XX年、異次元人との交配を試みたY(追放者により別記)の通報により発見される。 感染者は太陽系第三惑星、地球のホモサピエンス、メス。発症五年後に死去。他星に感染例なし。なお他20例臨床データあり。機密レベルCにアクセス参照のこと。 亜空間人には元から抗体のあるホストとなっていたウィルスであり、それは三次元の地球でAIDSを引き起こすHIVのように血液、精液、膣分泌液で多く見つかる。RNAを持ち、地球のヒトにおいては逆転写してDNA合成するレトロウィルス。地球におけるHIVのように感染力が弱く、熱や一般消毒薬により死滅する。一定時間外気に晒されればまた同じく死滅する。 しかし抗体を持たない地球人の体内にそれが侵入したとき、爆発的に増加し臓器を除く非角化タンパク質を食い荒らしていく。感染細胞のアポトーシス、ネクローシスが引き起こされ急激に進行する組織障害。急性感染症。 固い筋肉は繁殖地としてウィルスの好みではないらしく、柔らかい脂肪と皮膚等における大半で繁殖増加すると筋肉の上に黄緑色の皮膜を形成する。 それを契機にウィルスは細胞構造を得、片手落ちだった核酸のDNAを自己生成し、この後は偏性細胞内寄生するのではなく単独増殖、エネルギー産生が可能となる。ついで重症感染症によるアナフィラキシーショックが引き起こされる。皮膜を除去することにより症状が軽減したとの報告あり。有効な治療法、ワクチン共に開発段階までに至っていない。 このウィルスの最大の特色は、前述したようにある生物が感染することによって細胞構造を得る点にあり、高度な分子構造を得るまでに宿主を食い殺して自滅するミスを犯さない。飼い慣らすように、自らのたんぱくやエネルギーを惜しみなく作りだしてくれる宿主を殺さず生かし続け急激な進化を遂げる。繁殖地として最適であるよう皮膜をホストに形成させることで、無限に繁殖し続ける。その後ホストとなった感染者は通常の細菌性感染症を発症する。 なぜそのようなことが可能となったのかは未だ不明。現在研究中である。 亜空間特異的感染症研究所 XX/XX/20XX
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